しました。給料は4万5千円。 本社及びオープンセットは世田谷の成城にありました。 それは金沢での
ドラマー人生と京都でのドラマー人生の間のほんの2年のすきまのころでした。 きっかけは姉やいとこ
達がスクリプター（記録係）や、カメラマン、チーフ助監督をしていた関係のコネでした。三船敏郎主演、
大出俊、坂上二郎共演のテレビ時代劇 「荒野の素浪人」 や、里見浩太朗主演の 「大江戸捜査網」 を
担当しました。仕事と言えば、毎日朝５時に起きて御殿場などのロケーションの準備に始まり、小道具
の世話、エキストラの世話、あとはカチンコ（ボールド）を打つこと。これがなかなか難しい。 ある冬の
寒い日、手がかじかんでダブルボールド （二度打ち） を三船さんの顔のアップの時にやってしまった。
でも三船さんは笑って、 あの野太い声で「今日は寒いからなぁ」と優しかった。 エピソードは尽きない。
ある時 僕は、前の晩に飲みすぎて打ち合わせに遅刻した。 又ある時僕はロケーションに遅刻してしま
い、三船さん専用の車に同乗させてもらって御殿場まで針のむしろ状態だった。 その時先輩の助監督
がいみじくも言った。 「お前は馬鹿なのか大物なのかどっちだ？」 もちろん前者にきまっている。 三船
さんは優しくて非常に心の大きな人だった。只、時々二日酔いで登場し、言い難い台詞はドンドン簡単
な台詞に変えてしまった。ほとんど監督を無視。だって社長だもん。あと、ゲストに 大友柳太郎 さんが
来られた時には大感激。 なにせ子供の時にわくわくしながら観ていた銀幕の大スターだったからです。
大友柳太郎さんの「怪傑黒頭巾」とか 「 右門捕物帳」「鶯城の花嫁」「丹下左膳」 などは小学生のころ
近くの映画舘（ムーヴィー菊水）で親父に連れられてよく観たものだ。 次ページへ
